やぁやぁ、こんにちは。
桜花さん改め秋玖君だよ。
変なテンションでごめんね。ぶっちゃけこんなテンションじゃないと絶叫しそうなんだ。
ってか、ここどこですか。見知らぬ天井に周りの風景で超怖いんですけど。
私は学校に向かっていたんですよ? 違ったっけ?
いや、間違いなく学校に向かっていたわ。うん。
朝食の時、恭弥さんが「しばらくは学校休んだら」って言っていたけど、綱吉君と前日「また明日」って挨拶交わしてたから、学校に向かっていたんですよ。
それに教室行けばますます忠犬に磨きがかかった獄寺氏が拝めるし。
2759派としては大変美味しいです。
って、話が反れてしまいました。
まぁ、そんな訳で私は学校に向かっていたんですよ。
白昼夢にしては感覚があるし、夢遊病の確率は零に近いだろう。
……プチ家出をしてからの私の朝は恭弥さんの抱き枕状態ですので、夢遊病の確率はやっぱりないです。
ならばやっぱりここどこよ?
恭弥さんの言葉に素直に従っていた方が良かったのかしら……。
とりあえず見知った場所を探そう。遅くなるとさらに恭弥さんの監視が強まりそうだし。
そうなるとささやかな息抜きである一人での書店廻りも出来なくなるし。うん、頑張って帰ろう。
起き上がり、歩み始めた秋玖。
目指したのは光り指す方。
何となく進みだした方向であったが、進むにつれ秋玖は顔を引きつらせていた。
それもそのはず。
部屋から出るとさらに廃墟の如く廃れた建物の中で、このままでは危ないと建物の外へとなんとか出たのだが、外に出たら出たで森が一面に広がっていたのだ。
「うそ……」
と口から出た小さな言葉。
そしてまさかと思い振り返って見上げた廃墟に掲げられた建物の名称。
勘弁してよ……。と漏れた呟き。
ハッとした様子で自身を見渡し、そして触れて傷がない事を確認する。
「秋玖君!?」
「瑳神!?」
そんな秋玖の背から彼の名を呼ぶ声がかかる。
声に応じる様に秋玖が振り返れば、やはり綱吉と獄寺が驚いた表情で立っていた。
そして出会ってないが、秋玖が一方的に知っているリボーンとビアンキの姿もあった。
「綱吉に獄寺。……ここはどこだろうか」
とりあえず出会っている二人の名を呼び、そして場所を知らないふりをして尋ねる。
「どこって、知らないでこんなところにいるのかよ!」
唖然とした様子で声を露わにする獄寺。
その言葉に頷き
「学校へ向かっていたはずなんだが、なぜかその建物の中で気を失っていた」
そう説明をする。
そんな秋玖の説明に怪訝そうな様子で
「何でだろう? あ、それよりここは危ないから離れた方が良いよ」
呟くが、ハッとした様子で告げる。
「ああ。……綱吉達は中に行くのか?」
事実を知っているが、あえて問いかける。
「え、うん。助けなきゃい……」
「……おい、お前、何者だ」
静かだったリボーンが綱吉の言葉にかぶさる様にして問い掛ける。
「な! 何言っているんだよ、リボーン! 秋玖君、ごめん!!」
慌ててリボーンに声を荒げ、そして秋玖に謝る綱吉。
だが、秋玖は気にした様子も無くリボーンの問い掛けに声の主である彼を見てから、視線を合わせる為に屈む。
「私は綱吉の友人である瑳神 秋玖」
と一言だけで告げ、君は? といった問い掛けを視線で送る。
その視線にしばし沈黙で返すが、根負けしたかのように
「オレはツナの家庭教師だ」
口を開くが、名前は告げない。
そんなリボーンに気にした様子もなく
「そう」
と返す。
「……お前、本当に何者だ」
秋玖の態度に不信感を抱いたのか、鋭い目付きになり、尚且つ警戒する。
「さっき言った通り、綱吉の友人以外の何者でもないよ」
しれっと返したが、内心はかなり汗だくな状態である秋玖。
(何で私こんなにリボーンさんに疑われてるの!?)
ひぃー! 神様~。と泣き言を盛大に心の中で叫んでいると、綱吉が痺れを切らしたように
「リボーン、いい加減にしろよ! 秋玖君は一般人なんだから、怪しいとか危険とかそんな事は一切無いんだから!」
秋玖とリボーンの間に割って入る。
綱吉の言葉に視線は秋玖に向けたまま、理由を告げる。
「一般人だって言うなら何でそんなに気配が無いんだ。視覚的に捕えてなけりゃ存在を認識出来ない一般人は居ないだろ」
その言葉に困ったように
「気配が無いと言われてもな……」
と告げるが、今まで黙って状況を見守っていたビアンキが口を開く。
「瑳神と言ったわね。それは本当の名前?」
どこか探るような言葉。
「何言っているんだよ、姉貴」
ビアンキの言葉に獄寺が理解できない様子で問いかける。
秋玖の方は内心ヒヤヒヤしている。
「そうだが。本当の名じゃなかったら何かあるのか」
何とか絞り出した問いかけ。
「そう。リボーン、先を急ぎましょ」
問いかけには答えずリボーンに行こうと話しかける。
未だに納得していない様子であるが、先に進まなければいけないのも事実で、リボーンは秋玖への警戒を解く事なくビアンキに頷き、歩み始める。
そんなリボーンにビアンキは続く。
「秋玖君、リボーンとビアンキがごめん。オレ、先にいかなくちゃいけないから行くけど秋玖君は早くここから離れた方が良いから」
「……ここからあっちに歩いていけば道が見えて来るから、そのまま道なりに歩いていけ」
心配そうに告げる綱吉と、ぶっきらぼうに告げる獄寺。
そんな二人の言葉に頷き、秋玖はしばし迷った様子を見せるが口を開き
「……先の尖ったのには気をつけた方が良いと思う」
とだけ告げ、踵を返すと獄寺が教えてくれた道を進み始める。
秋玖が残した言葉に二人は首を傾げつつも、リボーン達を追う為に秋玖とは反対に向き直り、廃屋へと向かって歩み出したのであった。
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