復活6

 ピカッピカな、一年生! な秋玖君です。
 無事入学式も終え、まだお互い苗字+君呼びですが、綱吉君とも友達関係になりました。
 放課後以外は基本的に一緒に生活してます。
 周りから彼はすでにダメツナと呼ばれていますが、そんなの原作知っている身としては、気にすべき点ではありませんし、普通に生活する上では損害は受けませんから問題なしです。
 周りが綱吉君と関わるのを止めておけと言ってきますが、聞こえないふりです。
 あまりにしつこい奴に対してはちょっとお灸を据えさせて頂きました。
 数日前まで小学生だったガキに対して大人気ないとは思いましたが。
 だって、そいつ私が放課後急いで恭弥さんとこに向かっているのに邪魔してきたんですよ!
 死亡フラグ上がる要素を作らないで頂きたい。
 まぁ、そんな訳で私の交友関係に口出ししてくる輩はだいぶ減りました。
 うん、今日も一日無事過ごせますように。

 入学から数日後、帰りのホームルームにて実力テストの結果が戻ってきた。
 二度目の人生を送っている秋玖桜花)にとっては小学生時の学習など簡単で、結果など見えていたがやはり満点を取れば嬉しいもので、返ってきた答案を密やかに眺めて小さく笑いながら畳むと鞄に閉まったのであった。
 皆それぞれの結果を見終えて他者の点数が気になるのだろう、近くの席の者達とこそこそと話している。
 仲良くなった相手がどうか綱吉も気になるらしく、秋玖へと小さな声で話し掛ける。
瑳神君」
 呼ばれて秋玖は振り返ってみれば、様子を伺っている綱吉の姿。
「どうした?」
 短く返せば、綱吉は話すべきか、止めるべきか迷う。
「? ……あぁ、テストか。実力が出て良かったよ。沢田君が分からないとこを克服したいのであれば教えるけど」
 自尊心を傷付けないようにと気を遣いながら言えば、苦笑いを返された秋玖
(……失敗しちゃったかな?)
 微妙な綱吉の反応にしょんぼりしてしまう。
 それに気付き、慌てて礼を告げてきた。
「あ、ありがとう! だけど、俺バカだからさ、瑳神君に迷惑かけちゃうから」
 その言葉に綱吉をしっかり見つめて
「できないって決め付けるのはいけない」
 それだけ告げる。
 だが、その言葉を否定するようにクラスメイトが綱吉の答案を横からひったくるように奪い、点数をおおっぴらにする。
 その行いに対して綱吉は一生懸命答案を取り返そうとするが、なかなかうまくいかない。
 多勢に無勢でタックを組まれ、あっちにこっちにと行き来するが為にさらに苦戦してしまう。
 だが、それも長くは続かず、秋玖が背後より綱吉の答案を奪還したのだ。
 しかも、悪ふざけした面々を無言かつ、冷たい目で見下ろして。
 実年齢が十二歳でも十三歳でも無く、また雲雀家の血筋の為、余計に凄みが出ている。
「な、なんだよ! 文句でも有るのかよ!」
 勝気に吠えてくるが、すでに逃げ腰である為、全然脅威を感じさせない。
「くだらない」
 冷たい声色でたった一言それだけ吐き出す。
 たったそれだけで威力は莫大で、今まで綱吉をいじめていた者達が蟻の巣を散らしたように散り散りに去って行く。
 手の中の答案を見ないように畳み、綱吉へと近づき手渡す。
「大丈夫?」
 先程の冷たい態度は何処へやらで真逆な態度で心配そうに問う秋玖
 自分の為にあんなにも怒ってくれた事が嬉しくて、綱吉は大きく頷くと
「ありがとう! 瑳神君!!」
 そう感謝の意を告げる。
 それに困った様な笑みを零して
「大丈夫ならいい。……あと、秋玖
 頬をかき、名前で呼んで欲しいと告げる。
 その申し出に驚いた顔をして今度は綱吉の方が困った顔をする。
「えっと……」
「名前呼びして欲しい」
 静かに要望を告げる秋玖に綱吉は何故か頬が染まっていくのを感じ、頭を横に大きく降る。
「……ダメか?」
 残念そうな声が秋玖から漏れると、バッと反射的に
「ダメじゃない!」
 と言ってしまう。
 その言葉に小さな笑みを見せて
「ありがとう、綱吉」
 そう述べた後、何かに気が付いたようにハッとした表情を一瞬見せて、自席から鞄を持ち
「悪い、帰る」
 とだけ言い残して秋玖は頬を染めている綱吉の返事も聴かずに教室から出ていってしまったのである。
 そんな秋玖の背を見送りながら、今度は取られないように気を付けながら綱吉も自席に戻り、鞄にしまうと帰路へと着くのであった。

 急いで教室を出てきた秋玖は、玄関ではなく応接室へと向かっていた。
 ノックをして返事を待たずに中へと入る。
 すると待ち構えていたと言う出で立ちで恭弥が不機嫌そうに椅子に座っていた。
(ひぃー、怒っていらっしゃる)
 内心汗だらだらな状況ではあるが、応接室での秋玖の定位置はソファーであり、それ以上内にはビビって行けない為に秋玖はソファーへと座る。
 そんな秋玖の横に移動して座ると覗き込む様にして彼の顔を見る恭弥。
秋玖兄さん、僕は怒っているんだけど」
 そう告げてむくれる恭弥の頭を撫でながら
「あぁ、遅くなってすまない」
 謝罪の言葉を紡げば、擦り寄るように秋玖にくっつき、目を閉じる。
 そんな仕草に内心どうすればいいのか分っていない秋玖
 考えた末、恭弥の唇を指でなぞり
「学校」
 と短く言えば、目を開けて不満そうな視線を秋玖に向ける。
「兄さんの意地悪」
 ぷいっとそっぽを向いた恭弥。
(……な、なに、その爆発的な可愛さ。2718や1827目的では無く、死亡フラグさえなければ襲っていたよ! 絶対!! あー、身体男になったから実際の絡みも体験しようと思ったら出来るんだよね……。断然攻希望ですが! 痛い思いは嫌なんで。それに萌えるのは相手の可愛い表情見れるとこだし。うん、絶対攻めで秋玖君には突き進んでもらわねば!)
 表情が崩れないように横を向き、必死になって無表情を作る秋玖
 それがまた恭弥を拗ねさせる要因となる。
「兄さんのバカ!」
 膨れっ面を見せる恭弥に我慢出来なかったらしく
「可愛い」
 と声が漏れてしまった。
 たったそれだけの言葉ながらも、フッと笑った笑みがセットになったものは、秋玖にベタぼれな恭弥には刺激が強過ぎで……。
 体内の血液が沸騰していくように白い肌が朱に染まっていく。
「……秋玖兄さんはずるい」
 小さく呟いて、そのままギュッと秋玖に抱きついて離れようとしない。
 普段であれば風紀委員の誰かしらが報告をしに来るはずだが、来る気配はなく、グランドを使用している野球部の声や、ブラバンの演奏が微かに聞こえるのみ。
 一向に動く気配のない恭弥にどうしたものかと思案し、とりあえず今までの経験から自然と彼の髪を梳くようにして頭を撫でる秋玖
 最終下校時間まではまだ時間があり、恭弥が校内の見回りに行くには早すぎる。
 だから、彼は一緒に居られない時間を補う様に時間まで秋玖に甘えておこうと決めたのであった。