おはようございます。
桜花さん改め秋玖君です。
いやはや、前回の逃避から連れ戻されてから暫く家に監禁されました。
そんな恭弥さん私は知りません。
原作偽造も甚だしい。あり得ない。とは思いながらも、実際問題監禁されてしまったので、言っても仕方がないのですが。
一応の気づかいからか、家から出なければ拘束はしないって言われたので、頷き返しましたが、考えてみると日用品の買い出しどうするのだろう?
答えは恭弥さんのパシリにされた風紀委員会のメンバーが私の書いたメモを元に買い出し部隊になりました。
ちなみにメモは私から恭弥さん、恭弥さんからたいてい恭弥さんの近くに控えている彼……確か草壁さん? に渡され、ウチまで運ばれてきました。
もちろん、私は中に引っ込んで居ますので彼は私の存在を知りません。
まぁ、そんなこんなで監禁生活だったのですが、恭弥さんが風邪を引かれまして、入院しました。
それがきっかけで私は家から出られない監禁生活から解放はされたのですが、看病という事で現在恭弥さんが入院している病室にて果物を剥いています。
……何でこうなった?
ハッ! そういえば恭弥さんが風邪で入院した時って綱吉君も入院していなかったっけ?
なんて仲良しなの! ってニマニマした記憶があるからあっているはず。
マズイ。せっかく恭弥さんと兄弟であるという事を隠しているのにここにいたらばれるか疑われる!
どうにかしなきゃ!
「きょーちゃん」
うさぎを思わす剥き方をされたりんごが乗せられた皿をテーブルに置ながら秋玖は恭弥を呼ぶ。
本に向けられていた視線が秋玖へと移動して先を促す。
「少し歩いてくる」
暫くしたら戻ってくるから大人しくしときなさい。と目で告げ、秋玖は一度恭弥の頭を撫でて返事も聞かずに病室を出ていくのであった。
そんな秋玖の背を見送りつつ、強く唇を噛み締める。出来る事ならば行かないで傍に居てと口にしたかった。
だが、遠出から帰宅してから入院する迄の間、自己満足の為だけに秋玖の自由を奪った自分を兄である彼は責める事も怒る事もせずに、ただただ我が儘に付き合ってくれた。
だから、ずっと傍に居ては欲しいが、少しの間傍を離れるぐらいは我慢しなければと思う。
我が儘な振る舞いをしても変わらず接してくれる兄は優しかった。
弟というポジションに甘えている自分にイライラするが、弟でなければ秋玖は自分から離れていってしまう気がしてならない為、そのポジションから抜け出すに抜け出せずにいる。
何も言わず、書き置き等も残さず兄が自分の前から消えてしまったらと考えるだけで怖い。
生まれた時から共に居る存在。依存している存在。
両親が近くに居なくとも兄である秋玖さえ居ればそれで自分は満足であり、安心している。
素直に言えば少しでも離れるのは嫌な事である。
学校で兄弟だと伏せているのも本当は嫌な事だが、自分を気遣ってあえて兄弟ではないと振る舞ってくれているのだから、我慢しなければと思う。
兄である秋玖の行動は全て自分を気遣っての事なのだから。
「秋玖兄さん……」
秋玖の向いていったうさぎ型のりんごを手に取り名を呟いてから口に含んだ。
シャリっという音と共に口に広がった甘酸っぱいりんごの味。
まだ少々時期が早かったのか甘さより酸っぱさが口の中で主張する。
秋玖への想いも伝えるには今はまだ時期が早い。
嫌われないよう、でも少しでも多く彼の時間を自分に使って欲しいから我が儘を言ってしまう。
キリリと痛む胸を抑え、秋玖が出て行った扉に再度目を向ければ人の気配。
秋玖でないその気配に恭弥は獲物を手に取るのであった。
最近のコメント