月: 2020年2月

復活6

 ピカッピカな、一年生! な秋玖君です。
 無事入学式も終え、まだお互い苗字+君呼びですが、綱吉君とも友達関係になりました。
 放課後以外は基本的に一緒に生活してます。
 周りから彼はすでにダメツナと呼ばれていますが、そんなの原作知っている身としては、気にすべき点ではありませんし、普通に生活する上では損害は受けませんから問題なしです。
 周りが綱吉君と関わるのを止めておけと言ってきますが、聞こえないふりです。
 あまりにしつこい奴に対してはちょっとお灸を据えさせて頂きました。
 数日前まで小学生だったガキに対して大人気ないとは思いましたが。
 だって、そいつ私が放課後急いで恭弥さんとこに向かっているのに邪魔してきたんですよ!
 死亡フラグ上がる要素を作らないで頂きたい。
 まぁ、そんな訳で私の交友関係に口出ししてくる輩はだいぶ減りました。
 うん、今日も一日無事過ごせますように。

 入学から数日後、帰りのホームルームにて実力テストの結果が戻ってきた。
 二度目の人生を送っている秋玖桜花)にとっては小学生時の学習など簡単で、結果など見えていたがやはり満点を取れば嬉しいもので、返ってきた答案を密やかに眺めて小さく笑いながら畳むと鞄に閉まったのであった。
 皆それぞれの結果を見終えて他者の点数が気になるのだろう、近くの席の者達とこそこそと話している。
 仲良くなった相手がどうか綱吉も気になるらしく、秋玖へと小さな声で話し掛ける。
瑳神君」
 呼ばれて秋玖は振り返ってみれば、様子を伺っている綱吉の姿。
「どうした?」
 短く返せば、綱吉は話すべきか、止めるべきか迷う。
「? ……あぁ、テストか。実力が出て良かったよ。沢田君が分からないとこを克服したいのであれば教えるけど」
 自尊心を傷付けないようにと気を遣いながら言えば、苦笑いを返された秋玖
(……失敗しちゃったかな?)
 微妙な綱吉の反応にしょんぼりしてしまう。
 それに気付き、慌てて礼を告げてきた。
「あ、ありがとう! だけど、俺バカだからさ、瑳神君に迷惑かけちゃうから」
 その言葉に綱吉をしっかり見つめて
「できないって決め付けるのはいけない」
 それだけ告げる。
 だが、その言葉を否定するようにクラスメイトが綱吉の答案を横からひったくるように奪い、点数をおおっぴらにする。
 その行いに対して綱吉は一生懸命答案を取り返そうとするが、なかなかうまくいかない。
 多勢に無勢でタックを組まれ、あっちにこっちにと行き来するが為にさらに苦戦してしまう。
 だが、それも長くは続かず、秋玖が背後より綱吉の答案を奪還したのだ。
 しかも、悪ふざけした面々を無言かつ、冷たい目で見下ろして。
 実年齢が十二歳でも十三歳でも無く、また雲雀家の血筋の為、余計に凄みが出ている。
「な、なんだよ! 文句でも有るのかよ!」
 勝気に吠えてくるが、すでに逃げ腰である為、全然脅威を感じさせない。
「くだらない」
 冷たい声色でたった一言それだけ吐き出す。
 たったそれだけで威力は莫大で、今まで綱吉をいじめていた者達が蟻の巣を散らしたように散り散りに去って行く。
 手の中の答案を見ないように畳み、綱吉へと近づき手渡す。
「大丈夫?」
 先程の冷たい態度は何処へやらで真逆な態度で心配そうに問う秋玖
 自分の為にあんなにも怒ってくれた事が嬉しくて、綱吉は大きく頷くと
「ありがとう! 瑳神君!!」
 そう感謝の意を告げる。
 それに困った様な笑みを零して
「大丈夫ならいい。……あと、秋玖
 頬をかき、名前で呼んで欲しいと告げる。
 その申し出に驚いた顔をして今度は綱吉の方が困った顔をする。
「えっと……」
「名前呼びして欲しい」
 静かに要望を告げる秋玖に綱吉は何故か頬が染まっていくのを感じ、頭を横に大きく降る。
「……ダメか?」
 残念そうな声が秋玖から漏れると、バッと反射的に
「ダメじゃない!」
 と言ってしまう。
 その言葉に小さな笑みを見せて
「ありがとう、綱吉」
 そう述べた後、何かに気が付いたようにハッとした表情を一瞬見せて、自席から鞄を持ち
「悪い、帰る」
 とだけ言い残して秋玖は頬を染めている綱吉の返事も聴かずに教室から出ていってしまったのである。
 そんな秋玖の背を見送りながら、今度は取られないように気を付けながら綱吉も自席に戻り、鞄にしまうと帰路へと着くのであった。

 急いで教室を出てきた秋玖は、玄関ではなく応接室へと向かっていた。
 ノックをして返事を待たずに中へと入る。
 すると待ち構えていたと言う出で立ちで恭弥が不機嫌そうに椅子に座っていた。
(ひぃー、怒っていらっしゃる)
 内心汗だらだらな状況ではあるが、応接室での秋玖の定位置はソファーであり、それ以上内にはビビって行けない為に秋玖はソファーへと座る。
 そんな秋玖の横に移動して座ると覗き込む様にして彼の顔を見る恭弥。
秋玖兄さん、僕は怒っているんだけど」
 そう告げてむくれる恭弥の頭を撫でながら
「あぁ、遅くなってすまない」
 謝罪の言葉を紡げば、擦り寄るように秋玖にくっつき、目を閉じる。
 そんな仕草に内心どうすればいいのか分っていない秋玖
 考えた末、恭弥の唇を指でなぞり
「学校」
 と短く言えば、目を開けて不満そうな視線を秋玖に向ける。
「兄さんの意地悪」
 ぷいっとそっぽを向いた恭弥。
(……な、なに、その爆発的な可愛さ。2718や1827目的では無く、死亡フラグさえなければ襲っていたよ! 絶対!! あー、身体男になったから実際の絡みも体験しようと思ったら出来るんだよね……。断然攻希望ですが! 痛い思いは嫌なんで。それに萌えるのは相手の可愛い表情見れるとこだし。うん、絶対攻めで秋玖君には突き進んでもらわねば!)
 表情が崩れないように横を向き、必死になって無表情を作る秋玖
 それがまた恭弥を拗ねさせる要因となる。
「兄さんのバカ!」
 膨れっ面を見せる恭弥に我慢出来なかったらしく
「可愛い」
 と声が漏れてしまった。
 たったそれだけの言葉ながらも、フッと笑った笑みがセットになったものは、秋玖にベタぼれな恭弥には刺激が強過ぎで……。
 体内の血液が沸騰していくように白い肌が朱に染まっていく。
「……秋玖兄さんはずるい」
 小さく呟いて、そのままギュッと秋玖に抱きついて離れようとしない。
 普段であれば風紀委員の誰かしらが報告をしに来るはずだが、来る気配はなく、グランドを使用している野球部の声や、ブラバンの演奏が微かに聞こえるのみ。
 一向に動く気配のない恭弥にどうしたものかと思案し、とりあえず今までの経験から自然と彼の髪を梳くようにして頭を撫でる秋玖
 最終下校時間まではまだ時間があり、恭弥が校内の見回りに行くには早すぎる。
 だから、彼は一緒に居られない時間を補う様に時間まで秋玖に甘えておこうと決めたのであった。

復活5

 やあやあ、こんばんは。
 最近ネットブックを手に入れ、サイトを密やかに立ち上げた桜花さん改め秋玖君です。
 恭弥さんにはばれてはいません。
 うん、ロックかけて私以外には開けないように設定しているから。
 それに一応恭弥さんが居ない時にだけやるように心掛けているんです。
 そうしないと死亡フラグ上がりまくりなのでそうしているだけなんですけど。
 イベントに行けない憂さ晴らしをサイトで補ってはいますが、補え切れてないのは事実です。
 ……母親の名前使って通販申し込むか郵便局の私書箱借りて申し込むかしようかな。
 あー、でもしまう場所がなぁ……。
 ほんとイベント行きたい。
 そうそう、話は変わりますが、私、明日から中学一年生やります。
 実年齢とは異なる学年ですが、生まれ変わってから一度も中学生活してないので問題ありません。
 うん、恭弥さんに我が儘言ってみました。
 放課後は必ず恭弥さんとこに顔を出してから帰宅する! といった約束を取り付けられましたが、苗字は雲雀ではなく桜花の時のを名乗る事を許可させました。
 えぇ、ものすごい不満そうでいつ噛み殺されるかびくびくしながら説得しました。
 お互いの本当の関係を知っているのは二人だけで、二人の秘密みたいで良いでしょ? と言ってみたらあっさりオッケーが出ました。
 何でそこであっさり行くのか不明でしたが、まぁオッケーくれたからいいんです。
 うふふ、でも楽しみだなぁ~。うん、この際だからと思って恭弥さんにいっぱい我が儘言ったんです。
 1:中学一年生として中学生活を始めたい。
 2:苗字は雲雀ではなく瑳神で。
 3:クラスは1Aで。
 4:放課後に恭弥さんのとこに行く以外は関わり合いは無いようにする。
 5:行きと帰りは別々に。
 といった五つを押し通しました。
 苗字や放課後以外の接点を持たない事に対しての言い訳は「きょーちゃんの弱点にはなりたくない」と言う事にしました。
 したら、ほんのり頬を染めてコクリと頷いたと思うと抱きつかれ、グリグリとされた。
 き、恭弥さん、地味に痛かったです。
 とりあえず明日からは中学生活開始ですよ。
 入学式だから、転校生とかと違って目立たないで済みます。
 それに出席番号は沢田君の前なのです。
 ちょっと細工しました。
 えぇ、そこは恭弥さんのお兄ちゃんです。
 読書していた私の横に来てクラス編成の一覧をチェックし始めた恭弥さんに一緒に見せて貰って、ちょっと口を出して移動させました。
 うん、悪い子ですね。
 でも、桜花の経験上、出席番号が前後関係のが友達になりやすいんですよ?
 だから、口を出して移動させたんです。
 さ、明日からは早いからもう寝よう。
 久々の中学生活、楽しみだな。
 勉強忘れているとこ多いから授業、出来るだけ真面目に受けよう。
 赤点だったら恭弥さんに怒られそうだし。
 ……楽しみだけど恐ろしくもあるな。
 頑張れ、私。

復活4

 あー、頭痛い。
 こんにちは、頭痛には勝てない桜花さんってか秋玖君です。
 昔から偏頭痛に弱く、頭痛が始まるとダメさに磨きがかかります。
 うー、頭痛薬……。
 あちらの世界では医師に処方して貰っていたから、こちらでも処方して貰った方が安心なんですが、病気知らずな秋玖君ですから掛かり付けの病院がなければ医師も居ませんよ。
 今まで頭痛すら起こして来なかったのに何で……。
 とりあえず地味に頭ズキズキするから市販の頭痛薬を飲んでおかないと。
 救急箱の中あったかな……。

 鎮静剤を求め、リビングで救急箱を漁っていた秋玖
 そこに今起きたのか恭弥が目を擦りながら現われた。
 そして救急箱を漁っている秋玖の姿を見つけて、眠気が吹き飛んだのか慌てた様子で寄って来る。
「兄さん! どうかしたの!?」
 急にかけられた大声に内心かなりビックリした秋玖ではあったが、頭に響くのでゆっくりと振り返り
「おはよう……。頭痛がするだけだ」
 だから静かにしなさい。と言うかのように恭弥の口元に人差し指を当てる。
 そして再度ゆっくりとした動作で救急箱に向き直り、鎮静剤を探す。
 今までその様な兄を見た事が無かった恭弥は秋玖が触れた自分の唇に触れてしばらく動かなかったが、急にスクッと立ち上がり
「兄さん、待ってて! 今薬用意させるから!」
 とだけ言い残すと自室に置いたままの携帯を取りに行ったのであった。
 そんな恭弥にビックリしつつ、彼の言葉を反復してさらに頭が痛いと感じたのは言うまでもない。
(買って来させるって、恭弥さん……。今見つけたよ?)
 とりあえず痛い頭を押さえながら、休日に走りにさせられる相手が可哀相だからと恭弥の部屋に向かう秋玖であった。
(薬買わせに行かせる電話より、どうせなら病院の予約を取り付けて貰おう。診察受けて薬処方して貰った方が安心だし)
 移動しながら、秋玖はそういった事を思うのであった。

復活3.5

 奪っちゃった。
 兄さんの唇、やっぱり柔らかかった。
 ……っ!
 やっぱり兄さんの事が好き。
 兄さん、口数が少ないけど、僕が欲しい言葉はちゃんとくれる。
 でも言葉だけで、それ以上の事はしてくれないし、時たますごい意地悪。
 絶対僕の気持ちを知っていて焦らしているんだ。
 今日だって兄さんは僕に自分を探させておいて、抱きついたら「どうした?」って顔して僕を優しく呼ぶし。
 兄さんを探すのは嫌いじゃないけど、やっぱり片時も離れずにずっと一緒に居たいから、焦らされているみたいでいや。
 そりゃ、兄さん、見つけて抱きついたら呼んでくれて、嬉しくて兄さんを見上げたら、ご褒美って感じで頬に優しく触れて最高級の笑みを見せてくれて、僕の事「綺麗」って言ってくれたけど。
 照れ隠しで拗ねた風に「逃げたでしょう」って言ったら悪戯がばれたかって風に苦笑いして、触れていた手も離そうとするから、思わず掴んだ。
 そしたら「噛み殺す?」って妖しい笑み付きで聞いてくるし。
 反則。そんな笑み付きで聞かれたら出来る訳ないじゃん。
 そもそも、僕より強い兄さんを噛み殺せる訳がないし。
 分かっていて聞いてくる兄さんはずるい。
 だから、聞き返してもいいよね? という軽い気持ちで聞き返したんだ。
 軽率だった。
 兄さんは優しいけど、本当は凄く気高い存在なんだから、僕なんかが質問に対して悪戯に質問の返答以外を返して良い訳がないんだ。
 僕との言葉遊びに興味が失せたって感じで無表情で「痛いのは嫌い」って返されて、息がつまった。
 ごめんなさい! 兄さん、兄さんを噛み殺せる訳が無いって分かっていて、兄さんにかまって欲しくてふざけたんだ。お願いだから嫌いにならないで!
 兄さんに嫌われるぐらいなら僕、なんだってするから!
 そんな思いで必死になって兄さんを見上げてたら、ため息吐かれたけど「嫌いじゃない」って言ってくれて、「好きだ」っても言ってくれた。
 嬉しい。
 どうしよう、兄さんに好きって言ってもらえた!
 あっ……僕も言うの?
 兄さんが僕は言わないのかって見てる……。
「僕も秋玖兄さんが大好き! 好きなんだから……」
 っ……!
 恥ずかしいけど言ったよ! 何で聞こえなかったって顔して意地悪するの?
 ちゃんと言ったのに、兄さんの意地悪!
 僕にだって意地は有るんだから!
 思わず兄さんの襟首掴んで、赤い美味しそうな唇奪って、今度は聞こえなかったなんて顔させない為にしっかり兄さんの目を見て大きな声で宣言するように言った。
 したら絡まった視線で兄さん、よくできましたって一瞬目で語って……。
 あまりにその視線が恥ずかしくて逃げ出した。
 いつも格好良いけど、あの時の兄さんはいつも以上に格好良くて、兄さんの視線に耐えきれなかった。
 あのままあそこに居たら兄さん、僕の欲しい行動をしてくれたかもしれないのに!
 産まれた時からずっと一緒に居るのに、兄さんの強い刺激的な視線はあの時が初めてで、耐えきれなかったんだ。
 今でも思い出すと全身が熱を持って、身悶える。
 こんなの知らない。
 っ! 兄さん! 秋玖、兄さん!!

復活3

 姉さん、事件です。
 ………………。
 誰か私の納得いく事情説明をして下さい。
 ショートした頭ではいささか理解力が追い付きません。
 これは死亡フラグが上がったと認識すべきですか、先生。
 とりあえず理解力が低迷した頭でも情報を整理する事ぐらいは出来たので、理解をする為に再度考えてみよう。
 1:私はソファーに身を預けて図書館から借りた本を読んでいた。
 2:したら、恭弥さんが抱きついてきた。うん、ここまではよくある。
 3:どうしたのか聞く為に勇気を出して声をかけたら、綺麗な顔が見上げてきて、誘惑に勝てずに気が付いたら彼のきめ細かい頬に触れていた私の右手。
 4:やばいと思って引っ込めようとしたら、捕まって、聞かれたんだよね、「逃げようとしたでしょ」って。
 5:いよいよ噛み殺される? とビクビクしていたら無意識に口から言葉が漏れて、質問に質問で返され、しかも何でか手を舐められつつ上目遣いをされた。
 正直くすぐったくて、この時点ですでにあんまり頭動いていなかった気がしないでもないんだよね……。
 6:「痛いのは嫌い」ですって言ったら、急に恭弥さんが私は「噛み殺す事はしない」って確か言ってくれて、悲願するように「嫌いにならないで」って言われたんだよね。
 何で急に嫌いにならないでって言われたのか分からなくて、頭混がらがってきて何か言ったんだと思う。
 確か遠くで見ている分には「嫌いじゃない」だとか、綺麗な子は「好きだ」とかだったはず。
 したら、何でか不安そうだった恭弥さんの顔が綻んで、色づいたと。
 私、赤らめるような事は言っていないよね? 変態な事は言ったかもしれないけど。……最悪だな。
 7:とりあえず、変態な事を言ったかもしれない私に恭弥さんは何かが「好きだ」って言ったんだ。
 聞き取れなくて首を傾げた訳だ。もう一度お願いしますって、聞き返してもいいですか? と思っていた。うん、口を開けて聞こうとしたよ。
 8:次の瞬間、腰に残っていたもう片方の恭弥さんの腕に襟元引っ張られて、視界が揺れたと思ったら、綺麗な恭弥さんの顔のどアップがあって、唇に温かくて柔らかいものが触れたんだよね。
 9:何? と思う暇も無く私の事が「好き」だって真っ赤な顔で睨まれ言い逃げされた。と。
 ん? 私の事が好き?
 私の事が?
 ………………。
 ねねねねぇ姉さん! 大事件です!!
 唇を奪われただけでなく、ツンデレ恭弥さんに告白までされていました!
 わ、私は一体どうすればいいのでしょうか!?
 前世ってか、以前の世界では桜花と言う名の一応女でしたが、こちらの世界では秋玖と言う名の男です。
 しかも、何でか恭弥さんと血の繋がった二卵性の双子のお兄ちゃんなんです! これは確実なんですって! だって、誕生した時に私しっかりとその現場に居ましたし、聞きましたもの!
 え、って事は近親……。
 いや、うん、あの恭弥さんに限ってそんな事ありませんよ。
 だって唯我独尊俺様な恭弥さんですよ?
 こんな見た目軟弱草食系男子で中身腐女子な私にあの恭弥さんが恋心を抱くだなんて有り得ませんよ。
 きっと気の迷い。若気の至りですって。
 忙しくて家に居着かないこちらの両親の代わりに小さい時から面倒見てきたから、小さい子どもが母親や幼稚園の先生とかに抱く「将来お母さん(先生)と結婚するの!」って感情ですよね。
 うん、小さい時から私にべったりだったから、母親や幼稚園の先生とかに抱く気持ちを彼女らではなく私に抱いたんだな。
 なんだ、恭弥さんったら可愛いところも有るじゃないですか。
 でも正直ごめんなさい。
 私は2718か1827なんです。
 二人がイチャイチャしているところを影から見ていたいってのが本音です。
 私自身はあって足し算で、かけ算は不要なんです。
 いや、足し算も出来ればメインってか主要キャラとはごめんなさいをしたいんですが。
 死亡フラグがただでさえ産まれたての時から有る身としてはパーセンテージ上げたくないです。本当に。
 ……唇を奪われただけで今回は済んだけど、この事は胸に閉まっておくべきだよね。まだ出会ってない恭弥さんの彼(左パターン)に知られたら私殺されるかもしれないから。
 もれなくブラックな笑み付きで!
 あー、これが薄くて高い本か同人サイトでのネタならかなり美味しく頂けるのに! ツンデレ恭弥さんを鳴かせて美味しく頂いてますよ。私の下で。そうなると三角関係だよね! って、まだ一人登場人物欠けているけどさ。
 なんで現実なんだろう……。

復活2

 皆さんこんばんは。
 なぜか復活な世界に生まれ変わってしまった元瑳神 桜花で、現雲雀 秋玖な私も気が付きましたら小学校を卒業し、中学生になっていました。
 死亡フラグが上がるのを避けたくて、弟となってしまった彼、雲雀 恭弥から離れたいと願って十数年。
 何でか離れる事は叶わず、おはようからおやすみまでずっと彼と一緒です。
 うん、まだ産まれたての動けない時は離れる時間も少しはあったんだ。
 それが自由に動けるようになってから、私が逃げても彼が追いかけてくるから離れる時間もなくなった訳で。
 ……同人活動出来ないじゃん。
 鬱になりそうです、同人の神様。
 ネタが有るのに活動出来ないって。
 しかも、性別男になったから女性向けに手が出せない。
 いや、うん、出せたとしても、彼がずっと一緒の状態だと出せないようなものなんだけどね。
 あー、でも、そろそろ兄離れしてくれないかな。
 私、死亡フラグなんて欲しくないんだ。

「きょーちゃん」
 腰回りに腕を回された状態に、ソファーに座って本を読んでいた秋玖は固まりつつもなんとか声をかければ、声をかけられた方は顔を上げて声の主を見る。
(……なんで私、抱きつかれているのかしら? それにしてもますます綺麗な顔に育ってるよね。触ってもいいかな?)
「……綺麗」
 読んでいた本から片方の手を離し、頬へと触れる。
 秋玖の急な行動に、恭弥は頬を赤らめる。
(やばっ! 怒らせた!?)
 慌てて頬から手を離そうとすると、その手はあっさり捕まり、捕まえた本人の口元へと運ばれる。
秋玖兄さん、また逃げようとしたでしょ」
 手にかかる息がくすぐったくて逃れようとするも、しっかりと握られ、逃げる事は叶わない。
 そして言われた言葉を理解して、秋玖は内心慌てた。
(や、やばい! 怒ってないように見えて内心怒っていらっしゃる……。えっと、もしかしなくとも私、噛み殺される?)
「私を噛み殺す?」
 漏れた言葉は彼の心情とは異なり、挑発的な声音と笑みで相手へと伝わる。
「兄さんは噛み殺されたい?」
 捕まれた秋玖の手を舐め、上目遣いで聞いてくる恭弥。
(ひぃー! 勘弁願いたいです!! 痛いのは嫌いなんですって、昔から!)
「痛いのは嫌い」
 興味を無くしたかのような返事に焦り出す恭弥。
「っ……兄さんを噛み殺すぐらいなら! お願いだから嫌いにならないで!」
 恭弥の返答にホッとしたと同時に疑問が湧く。
(あーよかった! 噛み殺される心配はないみたい? あれ? でも何で嫌いにならないでって言われてるの? 私、死亡フラグさえ立たなければ、遠くで見る分には全然嫌いじゃないんだけど。むしろ、綺麗な男の子大好きだし)
「嫌いじゃない……好きだ」
 必死で見てくる恭弥に首を傾げつつ見返す秋玖
 漏れた言葉にパッと花が咲いたように表情が明るくなり、頬に赤みが差した恭弥。
「っ……も……が好きだから」
 ぶっきらぼうに告げられた言葉は小さく、秋玖は首をさらに傾げる。
 そんな彼の襟元を抱きついていたもう片方の手で引っ張り、無理やり自分の方へと顔を近付けさせると、攫うように唇を奪い、赤い顔で秋玖を睨むと
秋玖兄さんが好きだって言ったの!」
 と言い、恥ずかしかったのか、逃げるようにその場から去って行ったのだった。
 急に引っ張られ、ビックリしているところに、恭弥の顔がアップになったと認識する間もなく、唇に柔らかいものが触れ、恭弥に睨まれつつ告げられるだけ告げられ、去られた秋玖
 情報を整理仕切れず、彼は夕方を告げる自治体の放送が鳴るまで、ソファーの上に青天井の状態で固まっていたのであった。

復活1

 えー、元の自分に戻りたい気持ちがいっぱいな瑳神 桜花です。
 生まれ変わってからもう五年も経ちました。
 同人誌断ってから五年です。
 禁断症状出まくりできっと怪しい幼子だと周りに思われているでしょう。
 脳内妄想にもそろそろ根拠が入ってきました。
 えぇ、これで一本大作出来ますよ。
 ……現実逃避したくなる気持ちを察して下さい。
 私、「名前が決まった」と父親らしき若い男性が生まれた数日後に告げた瞬間、地獄のどん底に落とされた気持ちが増しました。
 えぇ、私の名前は別にいいんです。
 問題は苗字と、弟とされる後に産まれた子の名前。
 え、何ですか? その死亡フラグ全開な名前は。
 そんな事で自分がどこに生まれ変わったのか判断しました。
 外れて欲しいと願い続けて五年、どうやらその願いは受け入れてもらえないようです。
 歳を追う毎に私の知りえる彼に弟の身は育って行くのです。
 あぁ、神様、仏様。
 信じていないのにそう呟きたくなりました。
 私がどちらかといえば信じているのは、ネタの神様と、昔から日本にいる神様であり、他の宗教の崇められる存在は信じておりません。
 って、そんな事はどうでもいいですね。
 あぁ、せめてもの救いは弟が私を敵視していない事だと思います。
 生きていけているって素晴らしい。

「……にいさん。秋玖にいさん!」
 元彼女であった彼が別世界に意識を飛ばしているにも関わらず、彼を兄と呼び、彼を呼ぶ子ども。
 あまりに反応がないが為、子どもは頬を膨らませつつ別の手段を取る為、動き出した。
 数分の違いで兄となった子どもに対して、両親が夫婦間でよく行っている行為の真似を決行する事にしたのだ。
 相手が逃げれないように、座っているソファーに押し倒し、そして相手にのしかかった。
「うっ……なに?」
 急に腹部に感じた重さで意識を戻した元彼女であった彼。
 そんな彼の視野に飛び込んできたのは、自分に覆い重なって来ている弟となった子どもで。
 とっさに顔を反らして避けたところ、弟となった子どもから舌打ちが漏れた。
 冷や汗を内心だらだらと流しつつ、彼は弟となった子どもに声をかける。
「きょーちゃん? 私に何を……」
 顔は怖くて観れないとでも言うかのように反らしたまま彼は問う。
 そんな彼の顔を両手で挟み、自分に向けさせると
秋玖にいさんがわるいんだから」
 と一言。
(ひぃー! 私知らない内にまた何かしたの!? ってか、恭弥さん、それ答えになってないから!)
「きょーちゃん、それ答えになってない」
 じっと見上げた先にある弟の顔は悲しそうに歪み、次の瞬間、彼にその顔を見られないようにするかのように彼の胸に抱きついて顔を埋める。
(な、なに? え、恭弥さん!?)
 おろおろしながらも、抱きついて来た存在の背を撫でてしまうのは、五年という歳月によって染み込んだ習慣からなるもので。
 小さくため息を吐くとポンポンとするのであった。

寝て起きたらまさかの二次元でした 序章

きっかけはいったいなんだったんだろうか?
私は普通に生活を送っていたはず。
一般人とは少々異なったけど、それでも私にとっては普通の生活だった。
例え世間一般からオタクといったカテゴリーに部類される身であったとしても。
とはいえ、隠れであったし、一般的な交流もしていた。
うん、普通じゃない。
ただ、人よりマンガやゲームといった娯楽が好きだっただけ。
四季を楽しむように季節毎に締切とかにも追われたけど、辛い後には至福が待っていたわ。
薄くて高い本だって大好きよ。
それの為に私は土日祝日完全休業のところ選んで就職したし、通常勤務も残業だって真面目に文句言わずにしっかりとがっつりとやってきたんだから。
それなのにこの仕打ちって何?
誰か説明して。
死ぬ気で脱稿した原稿三種類が無事本になっていよいよ明日はイベントだってウキウキして寝たはずよね?
最近のマイブームであるけどマイナーカプってか右左が逆なせいでうち以外あまりサークルを見ないから周り巻き込んでミニオンリー組んだのに!
それとは別に原作発売して初のイベントの作品もあったのに! まだ間もないけど、すでに人気作品だから絶対本出しているサークルさんうち以外にいるとふんで楽しみにしていただけにこの仕打ちは納得出来ない!
ねぇ、私何かしたの?
ただイベント楽しみに隠れオタクとして一生懸命生きてきただけなのに!!
翌日の大きなイベントを楽しみにして早々に寝た夜。
朝だと思って目を覚ましたら眩しい人工的な大量の光。
手術服着たマスク眼鏡の医師と思わしき人物と看護師らしき人物、若い男女の姿、赤子の鳴き声。
何事?
そう聞こうと口を開いたら、出てきたのは赤子の泣き声。
え?
なに?
今の泣き声。え、もしかしなくても私の口から出た?
ウソうそ嘘!
何で私の口から赤子の泣き声が出てくる訳?
なんで?
ってか、今聞き捨てならない言葉を聞いた気がするんですが、ワンモアプリーズ! かなり年のいったお姉さん!

「おめでとう、よく頑張ったわね! 二人とも元気な男の赤ちゃんよ」
「あ、ありがとうございます……。あぁ、貴方にこの子は似ているわ」
「弟の方は、お前に似て美人になりそうだな!」
幸せを噛み締めている感に溢れている空間で新たな命は泣き声を上げるのであった。

社会人三年目に入った隠れオタクの瑳神 桜花であったはずの私。
それが、翌日のイベントを楽しみにして早々に寝た夜から目覚めてみれば、なんとまぁ、酷い事態に。
そう、どうやら記憶を持ったまま他者に生まれ変わったらしいです。
うん、おかしいよね?
だって私、死んでないもの。
ただ休んだだけでしょ?
なのに生まれ変わっただなんて、これはきっと夢だ! って思ったからとりあえずまた寝た訳。
ほら、赤ちゃんって寝るのと泣くのが仕事でしょ?
だからすんなり眠れたんだけど……。
そう、顔に攻撃くらって痛さで目が覚めたんだけど、視野に飛び込んできたのは寝る前に見た天井と、攻撃の元と思われる小さな腕。
寝ても戻らなければ、殴られて痛みを感じるこの身。
何て訳の分からない事態だろう。
生まれ変わる理由が分からない。
そりゃ、イベントの後で戦利品読み終えていたらまぁ、こんなにも乱さないと思う。
……やっぱ無理だわ。
戦利品読み終えたら、翌日には次の原稿のネタ出し始めていたから、あっちでの私。
しかし、生まれ変わるにしても、他意を感じるのよね。
一つ。私は生まれ変わる事を望んではいなかった。
一つ。生まれ変わるにしても性別が変わる必要はない。
一つ。どうやらここは私が生まれ育った世界ではないらしい。
私自身の意志であるなら生まれ変わるにしても同じ条件を望む。
というか、まだ私は人生全うしてないし、何より私の家や部屋に同業者以外の他人が入り込む事を想像するだけで!
ヤバイやばい! ヤバイから、まじで!!
ちょ、誰だか分からないけど、私を元の私に戻して!